写真:現在のイルラの集落(CRD提供)
政府の支援で建てられた家々。
しかし森の中での狩りや採集によって生計を立てているので、
この家を収穫したものの貯蔵庫として使い、
主には森の中に自分で建てた簡易な家で暮らす人もいる。
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今月、月曜日と木曜日のブログは、
AHIニュース6月号「『信じて任せる。』スターリンさんの次世代の育て方」
に関連するエピソードです。
第5回目の今日は、イルラの人たちが問題について話し合いを始めたお話しです。
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スターリンさんの提案で、10の集落それぞれで
イルラの人たちが生活における問題について話し合いました。
どの集落でも同じような問題があがりました。
- 貧困
- 安全な家がない
- 安全な水がない
- 公衆衛生の問題、特に屋外排泄が原因
- 女性と子どもの健康状態が悪い
- 子どもたちが教育を受けられない
どの問題に取り組むにしても、指定部族としての身分証を取得することが先決です。
指定部族は、政府から様ざまな支援策を受けられるからです。
しかし、たとえ身分証が手に入ったとしても、
すぐに行政が山奥に分け入って、
インフラを整備したり、建物を建ててくれるわけではなく、
一つひとつ自分たちで行政に要望していかなければいけません。
スターリンさんはそのことを繰り返しイルラの人たちに説きました。
この頃、森で薪をとっていたイルラの人たちが、
違法行為だとして森林局に拘束される事件がありました。
これに対しイルラの人たちは、
「自分たちは何十年ものあいだ森の資源を利用して暮らしてきたんだ!」
と抗議し、仲間は無事に解放されました。
イルラの人たちは、団結して声をあげれば状況を変えることができることを実感し、
それをサポートしてくれたスターリンさんと
所属NGO・農村開発協議会への信頼を深めました。
2006年の終わり、郡は申請のあった752名に身分証を発行しました。
身分証を手に入れた人たちは、次に収入証明書を求めてロビー活動をしました。
収入が十分でないことが認められれば、行政から食糧品の配給を受けられるからです。
イルラの人たちは、郡の役場前にテントを張って訴えを続けました。
スターリンさんはここに新聞やテレビ局を招きました。
各メディアは、子どもを連れたイルラの女性たちが煮炊きする写真や映像とともに、
彼らの要求や森での暮らしの実態を紹介しました。
人権弁護士が応援にかけつるなど、世間の注目を集めたこともあり、
行政はすみやかに150世帯に収入証明書を発行しました。
これらの成果は口コミでクリシュナギリの森に暮らすイルラの人たちに広まり、
2008年にはさらに12の集落で、イルラの人たちが身分証を申請しました。
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第6回「イルラの人たち、行政を動かす」は、6月21日(月)です。
職員 髙田弥生