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 エク・ムスティ・チャール~ひとつかみのお米から~

 

 ここはバングラデシュという国にある、ナトール県ジョアリ村。

 

 

 「ションパ、6時よ!起きなさい!!」

ションパは早起きが苦手。

毎朝お母さんに起こされます。

眠い目をこすりながら、

友達のミムと2人で、

勉強を見てくれる先生の家に

出かけます。

バングラデシュでは、

学校の授業だけで

進級試験に合格することは難しいのです。

 

 

朝の勉強から帰ると、井戸で顔や体を洗い 服を洗濯して、学校の制服に着がえたら、さあ朝ごはん。 

 

ごはんとマッシュポテトと野菜に、今日はあげもあります。
ションパは右手でおいしそうに食べます。

 

 

 

 

 

 

 

友達のミムが誘いにきました。

テライル小学校までは2キロ、近所のお友達とおしゃべりしながら歩いて行けばすぐです。

 

 

 

学校は朝10時から夕方4時まで。
木曜日は2時に終わり、金曜日だけはお休みです。
毎朝、全校生徒が校庭に集まって、国歌を歌い、
コーランの祈りを唱えます。

 

ションパは4年生。授業は、国語・英語・算数・
社会・宗教(イスラム教)の5科目です。

 

 

 

 

お昼休みになると、みんな、ごはんを

食べに家に帰ります。

 

昼ごはんを食べると、ションパはまた

大急ぎで学校へ!

図書室で本を借りられるのはお昼休みだけです。

     

ションパは、お話の本が大好き。

今日はどんな本に出会えるかな?

 

 

 

また、先生と一緒に歌を歌ったり、
詩を朗読したり、それにダンスもするんです。
     
 2月21日の「母語運動の日」には、
仲良しの女の子たちと、みんなの前で踊りの発表をします。

 

 

 

 

 

学校が終わると、お菓子やアイスクリームを売る人がやってきます。   
ションパはあまりおこづかいをもらえないので買えません。

でも、時々仲良しの友だちが分けてくれます。

 

 家に帰ると、蒸かしたお米のおやつを

食べて、遊びに出かけます。

 

 

みんなが好きな遊びは、「プタル・ケラ」、

お人形の結婚式ごっこ。

 


お人形にきれいな花嫁衣裳

(サリー)を着せて、
化粧をして、お婿むこさんはすてきな男の人。

ごちそうは、花や木の実を葉っぱにのせて・・・

 

小さいころからこうした遊びをしながら、

女性は結婚して、子どもを産み、

家族のために家事をすることが何よりも

大事だと教えられるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が暮れるとションパは、ランプの明かりで勉強します。
村には電気が来ていません。

 

 

 

 

 

 

 

お母さんがよその家での
メイドの仕事から帰ってきました。  

みんなでごはん。
ションパは決して好き嫌いを言いません。

でも大好きなミルクご飯が出るともう

大喜びです。

 

<バングラデシュの一般家庭料理> 

 

 

ションパはお母さんと3つ上のお兄さんのシャミンと3人らし。
お父さんのことはよく知りません。

 

 

お母さんのサビナが父親に言われて結婚したのは、10年生、まだ15歳の時でした。

 

父親は、この結婚のためにを売って、

1万タカ(9,700円)のダウリ(結婚持参金)

用意しました。

夫は、村の畑で日雇いとして働き、
年に8,000タカ(約7,800円)を稼ぎました。

 

でも生活は苦しく、サビナも針仕事
ヤシの葉でうちわやゴザを作り、朝から晩まで働きました。

 

いつからか、サビナの夫は家にお金を持ち帰らなくなりました。

村人から、他につきあっている女性がいることを知らされ、サビナは夫と離婚しました。 

 

 

幼い2人の子どもをえて、どうしていいか分かりませんでした。

 

わずかな土地と、<ひとつかみ>で貯めたお米が10kg。

 

サビナはその米を売ってこの村で生きる決心をしたのでした。

 

 

 

 

「お母さん、そのお米は何に使うの?」
台所で、サビナがお米をひとつかみだけ
別のつぼに入れていたのを
不思議に思ったションパが尋ねました。

 

「これはエク・ムスティ・チャール

(ひとつかみの米)と言ってね、

お金に困った時のために貯めておくのよ」
サビナは微笑みながら答えました。

 

「どこの家でも、お母さんは一日中働いているでしょ。
子育て、家事、畑仕事、家畜
世話……

でもね、そんなに働いても女の人は、

お金を勝手に使えないのよ。

 

だから、食事をつくるたびにちょっとずつ米を貯めておいて、いざという時にはそれを売ってお金にするの。お母さんも、あなたのおばあちゃんからその知恵(ちえ)を教わったわ」

 

 

農村の生活はしく、

女の子が学校を続けるのも大変です。
    
ションパと同じ村にモルジナという
女の子がいます。
モルジナは学校が大好きです。

7年生のとき、父親がモルジナよりもずっと年上の相手との結婚を決めてしまいました。

  

「まだ 結婚したくない! もっと勉強して、いい仕事を見つけて家族の役に立ちたいの!」
    
モルジナはお母さんに泣いてみましたが、お父さんが決めたことに逆らえず、結婚させられました。

 

 

ダウリ(結婚持参金)が少なかったので、モルジナは、夫とその家族からひどい暴力を受けました。

 

必死の思いで実家にったモルジナは、お母さんが入っていた女性グループの人たちやNGOの助けもあって、やっと離婚することができました。

 

 

今モルジナは、もういちど7年生として学校に通っています。

 

 

 

 

 

 

 

ションパのお母さんのサビナは今、「ゴラップ・マフィナ・ショミティ(バラの女性の会)」というグループのリーダーです。

お母さんたちは貯めておいた

<ひとつかみのお米>

をグループに持ち寄ります。



 

 

ひとりひとりが貯めるお米はわずかですが、

メンバーみんなのお米を集めて、町の市場で売れば、

まとまったお金になります。

 

 

お母さんたちは、貧しくても娘たちを学校に通わせたいと願うようになりました。

「みんなで力を合わせれば、女の人も強くなれるのよ」

 

サビナは大きな喜びと誇りを感じています。

 

 

ションパは、お母さんが苦労してお金を貯めてくれていることを知っています。

いつか自分が働いて、お母さんを支えてあげたい・・・

「いっぱい勉強して、将来は学校の先生になるの!」

 

 

 サビナさんからのメッセージ

 

 サビナさんは、2011年秋にマゼットさんと共に来日し、

自らリーダーを務めるグループの活動について、

各地で報告しました。

 

 

バングラデシュでシングルマザーとして生きることは大変です。

たいてい、村の人や親戚から見下げられて生活しなくてはいけません。

これまで、村の外に1人で出る勇気など全くなかったのですが、

日本を訪問して帰国した今、私はとても自信をいています。

なぜなら、日本で出会った女性や女性グループの方たちの様子と活動に、

とてもまされたからです。

彼女たちは、自分のためだけではなく、仕事と家事を両立し、

またお金と時間と労働をしまずに社会のために積極的に働いています。

また、それぞれに高い教育を受けた方たちでしたが

しいシングルマザーの私を無視したりすることなく、

私のグループや村の話を熱心に聞いてくれました。

このれられない出会いを、

これからグループや村の人たちに伝えていきたいと思います。

そして、女性の教育がいかに大事であるかということも実感しました。

私の娘が望まない結婚をしなくてもいいように、

この先も教育を受け続けさせてあげたいと思います。

 

モサマド・サビナ

 

マゼットさんからのメッセージ

 

バングラデシュでは今日の食事にもありつけない家族がいます。

をすかし栄養不足に苦しむ子どもたちが大勢います。

18未満で結婚させられ、

ダウリのために夫やその家族によって

ひどい差別と虐待を受けている少女たちがいます。

 

貧しさと、そこからす方法を考えることもできない

女性の地位の低さが原因です。

私たち「ジャゴラニ・チャクラ財団」は、この ような現状を変えるために、

他のNGO政府とともに女性たちの権利を守る活動に取り組んでいます。

しかし、彼女たちの自立を助けるためにはまだ多くの支援が必要です。

サビナさんは古いしきたりのために悲しい体験をしましたが、

「ひとつかみの米」という伝統的な女性の知恵を活かして仲間をやしました。

こうしたグループは、女性が経済的、社会的に自立する機会をつくり、

社会を変える力となっています。

私が活動する村の女性たちの生活を通じて、

みなさんがバングラデシュについてより理解し、

自分たちの社会をよりよくする活動に目を向けるきっかけになればうれしく思います。

カジ・マゼット・ナワズ

NGO「ジャゴラニ・チャクラ財団」職員

2007国際研修参加者

 

 

 

※アジアの子どもNo.54の冊子をご希望の方はこちらにご連絡ください。

無料で差し上げています。

 

 

発行責任者:齋藤尚文 編集者:「アジアの子ども」編集委員会(担当職員:大熊優子、カメイ尚美

編集委員:神谷欣吾、野田葉子、森天子、山田順子、浦口奈里子 イラスト:首藤光子 レイアウト:小崎有美 カメイ尚美)

 

 

 

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>バングラデシュについて 

 

 

 

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