AHIも加盟しているJANNET(障害分野NGO連絡会)のニュースレター(2020年10月発行205号)に、
精神疾患を抱える人たちとその家族およびそのリスクが高い人たちが集まる自助グループの活動を紹介する記事を、掲載していただきました。
このグループのメンバーは、
AHIの研修生(ビーナ・シリワルさん、ティルタ・タパさん)が所属する団体、
コピラ・ネパールが長年支援してきた人たちです。
ロックダウンが続き、コピラ・ネパールのスタッフも訪れることができない村で、
自助グループの人びと自身が、生活の不安にかられる村人たちの心を支えています。
JANNETさんの許可をいただき、そのまま転載いたします。
ニュースレターを全部読みたい!という方は、
事務局 info@ahi-japan.jpまでお知らせください。
AHI 清水香子
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ロックダウンの続くネパールの山村で~当事者と家族の自助グループの力
アジア保健研修所(AHI)職員
清水 香子
近年ネパールでは、経済成長とともに貧富の差が拡大し、貧困に関わる様々な事柄が人びとの心を蝕むようになっています。インドや都市部へ出稼ぎに行き差別や孤独感から鬱になる人、失業や過酷な労働から逃れるため飲酒や薬に走る人、そうした人から暴力を受ける人。
そして特に地方においては、精神科の知識を持つ保健従事者は不足している上、偏見や差別が根強く残り、手を差し伸べられず症状を悪化させている例が多くみられます。
AHIの元研修生が設立したNGO「コピラネパール」は、このような西部9郡の山村で、精神疾患のある当事者やその家族が集まる自助グループづくりと、その連合体強化をすすめてきました。グループのメンバーたちは、生活の悩みや困りごとを出し合い、解決に向けて助け合います。
その活動は多様です。グループ貯蓄や共同菜園づくり、心の病気を抱えた人の発見やその家族の相談、小学校の教員や村行政と連携して行う、子どもたち、住民、行政職員を対象にした偏見や差別をなくす研修まで。徐々に、心の病気について理解しはじめた村人たちや行政の姿勢が変化し、メンバーへの態度も変わっていきました。
そして今。現在(10月初旬)もロックダウンが続きコピラネパールのスタッフも入れない村で、村の人びとに頼られ活動する自助グループの姿があります。不安を抱えた多くの人たちがメンバーの家を訪れます。
メンバーはそうした人たちの話に耳を傾け、専門的な治療が必要な場合は、行政やコピラネパールの支援につなげます。収入が途絶えた人びとへの補助金を行政から引き出す交渉も行いました。
「以前は差別され、自分は無力な存在だと思っていました。今は、そんな私でもここにいていい、ここで人の役に立つことができる、と知りました」-6年前の、自助グループのある女性の言葉です。
誰もが地域の中で大切な存在とされ、関わる場や役割がある。それこそが地域が困難を乗り越える力になる。その確かさを、このコロナ禍にあって、より一層思います。
紙面転載
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